公開日: 2024年08月27日 / 更新日: 2024年10月04日
例年通りならば、2024年10月より改定最低賃金が適用になります。今年の特徴はすべてのエリアで50円アップとなったことです。全国の平均最低賃金は1054円。過去最高の賃金アップとなりました。
そもそも最低賃金はどの様にして決められているのでしょうか。また、今回の賃金改定によってどんな影響や効用が起こるのでしょうか、詳しく解説していきます。
家賃などを除く総合的な消費者物価指数と、頻繁に購入する商品などの物価指数がどれだけ上がっているかが検討の材料になります。総合的な消費者物価指数は3.3%。生活に直結する物価が上昇しているので、賃金が上がらないとそもそもの消費活動に回りません。
労働者の賃金については春闘が重要な意味を持ちます。春闘は、毎年労使間で行われる賃金のベースアップについての協議のことです。
特に2023年、2024年は象徴的な春闘で、最低賃金上昇にも密接に関わっております。2021年からウクライナ戦争が始まり、エネルギー不安から多くの原材料費が高騰しました。
そこからAIなど大手テック系、主に米国企業に世界の資金が集まり、中国経済の不安要素も重なって、ドル高・円安が加速していきました。
日本国内の生活必需品がどんどん値上がりし、いわゆるインフレに突入。その結果2023年の春闘は、労働者の生活維持のための意味合いが強いものでした。インフレからきた最低賃金上昇と言えるもので、コストプッシュ型の賃上げだったと考えております。
翻って2024年の春闘の特徴は、内発的な賃上げでありました。長いデフレ時代と決別するため、何より「良い人材」を獲得するための賃上げをすると大手企業はじめそれこそ中堅・中小企業もならってあげたのが2024年春闘です。
物価上昇率を上回る賃金設定でないと「生活苦」の状態になってしまうため、最低賃金は「生活の最低保証ライン=ライフライン」のボーダーでもあると言えます。
その流れは、地域別最低賃金改定にも如実に現れており、今年は5%となる50円アップ。全国平均の最低賃金は1054円となりました。政府の掲げる「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024 改訂版」では2030年代に1500円を目指すとあるため、このままいけば毎年5%ずつ上がる計算になります。
大企業と中小企業において、一番の乖離がある部分がこの「支払い能力」という観点です。支払い能力については、労働分配率で示されますが、これは下記のような考え方になります。
労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100
ここでの人件費には、給与、賞与、役員報酬だけでなく、法定福利費や福利厚生費なども含まれます。
付加価値は企業が新たに生み出した価値を指し、一般的に以下のように計算されます。
中小企業の場合: 売上高 - 変動費(原材料費など)
基準は40〜50%、警戒ラインは70〜80%。
この点では、規模の小さい企業様ほど労働分配率が高くなっている傾向があります。
資本金1000万円未満=85%、資本金1000万円以上=65%
おそらくこの構造についてはこれからさらに進むものと考えられます。事実、倒産件数は増加傾向にあり、80%は従業員規模10名未満の事業者様でした。
・当然の如く人件費が上がり、利益を圧迫する要因になります。
・扶養内勤務を希望するパートさんが多い場合、労働時間を減らす選択をとるかもしれません。
・社員の待遇が上がっていなければ、不満を覚え、転職を考える方もいるはずです。
実際に、パートアルバイトを100名雇用しているケースで試算してみます。
週15時間勤務(月60時間)でも年間で360万円の人件費アップです。
フルタイム(月176時間)なら1056万円なので、事業インパクトは相当です。
ただでさえ人手が足りないのに、働く時間を減らさないといけないなど、「どんな罰ゲーム?」と考えてしまわれるのも仕方がないことだと思います。
では、本題です。私たちが仕事をする上で、またスタッフ様や事業運営を行う際に重視しなければならない点はどこでしょうか。もう耳タコかもしれませんが、労働分配率の分母となる「付加価値」
を高めること。そして人件費を最適にすることです。人件費の最適化というのは、「省人化」「自動化」「外部リソースの活用」などで、賃金を上げないことではありません。
また、値段についての検討(価格転嫁)も並行して行わざるを得ない状況かと思います。
個人も、組織も、企業も「VRIO」を意識して生きていかねばならない。すなわち「自力」と「らしさ」を持ち合わせることを、環境が要求してきたのだと考えております。
※VRIOは、Value(価値)、Rarity(希少性)、Inimitability(模倣困難性)、Organaization(組織適合性=再現性と成果につながる)のこと。
※私も最近色々勉強して、新しい視点を持てるように足掻き中です。
常に最低賃金を意識して給与設定をする、ということは毎年上がり続ける人件費に悩み続けることになります。それだとイタチごっこになりますし、おそらく「人=コスト」という構造から抜けることは困難です。
賃金UPだけではない打ち手や実際の採用事例は是非こちらをご覧ください。
・人を雇いやすくなること。
・良い人材と出会える確率が高くなること。
・企業として選ばれやすくなること。
・給与が上がることで、モチベーションが上がり、より高い付加価値を生む出してくれること。
気持ちよく給与を払って、喜んでもらいたい。それはおそらく全ての経営者様の本音ではないでしょうか。それができれば、悩みもありませんし、全員が幸せな状態になっている…それが難しいのが現在の日本であります。
自社のVRIOを明らかにし、市場と自社の付加価値を整理していく。それに対してどのような人材が必要かを考え、採用を行なっていく時に重要なこと、それは「誰でもいいわけじゃない」という、ひどく当たり前のところに行き着くということです。
最低賃金の話から最後は採用の話になってしまい、恐縮ですが最終的には、「誰を採用するか」「なぜ採用するか」「採用してどうしたいのか」そこがブレると、ただのコストUPになってしまいます。
ぜひ、賃金が上がることはどういうことなのかから考えさせていただき、自社の事業拡大のために
お時間をこれからもいただけますと幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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